「私、らしく」チラリと、腕の時計に目をやる。 ・・・・・まだ、予定の時間には早い。 それはそうよね。
何て思いながら だけど。 それも仕方ないか。
この子は海に沈んでもらったし。 次の式は。 この時間ではくたばってるし。
そう。 ちらり。 又、時計に目が行ってしまう。 あああ。 待ってるのは苦痛じゃないけど。 流石に三時間前は早かったかなあ。
いつも私はここで幹也を待っている。 たまたま今日は予定の時間よりも早く来てしまっていて この時間が この幹也待ちの時間が 私が恋する乙女なんだって自覚させる。 恋人を待つ時間が苦痛だなんて この待ち時間に色々と思いを巡らせる。
何処で何を食べようか。 どんな映画、やっていたっけ。 天気がいいから少し足を伸ばして・・・ そんな色々な事が考えられる
こんな可愛い恋人を何時まで待たせて置くのかしら。 来たら、開口一番に文句を言ってやろうかな。 でも。
そんな事で逆ギレしてたら、折角のデートがご破算になってしまう。
幹也は式と一緒にいることが多くなったし。 これ以上差をつけられたら溜まったもんじゃないわ。 ここで何とか、追いつかないと。
今日は何時にも増してしっかりお洒落して来たし。 いつもよりかなり気合入れてメイクもしたのよ。 このまま結婚式にだって出られる、って言う位のしっかりメイクに洋服。
恋する乙女にブレーキと言うものは無いのだよ。 思い立ったら命懸け。 って昔の人も言ってたじゃない。
まだ、か。 ちょっと、長いなあ。
大時計を挟む格好で。 一人の女性の人が背を向けて立ってる。 全然気が付かなかった。
チラリとその後ろの女性を見る。 白い洋服に映える長い黒髪。 腰まではあるかな。 私も長い方だけど。 髪を洗う時大変だな。 なんだろう。 ワンピースかな。 かなり良い物みたい。 普段はそうお目にかかれない代物と見た。 礼園にもこんなお嬢は滅多に見られんぞ。 同じく
だが、 ありえないわ。
やはり早めに着たのか
藤乃に聞けば判ったかも知れない。 そして。 駅前には時計を挟んで女性が二人。 その女性も私と同じだろうって 強いて言うなら、女のカン、って奴かしら。 時計を見ては溜息をついて。 疎ましそうに髪の毛をかき上げる。 「もう」 とか小声で言って、指に髪の毛を絡ませる。 腕を組んだかと思えば腰に手をやり。
何だか、自分の今までを鏡で見ているみたい。 今まで自分もこんなんだったかな。
やっぱり。 恋人を待っていて
その女性も同じく。 一瞬だけ、視線が合った。 どきりとした。 式までとは行かないけど。 時間を見るのを忘れてしまう位。 町で十人中、九人は振り返るかな。 それ位の美人。 相手が私を見てるのに気が付き。
正真正銘のお嬢様だわ。 そういう学校に行ってる私が言うんだもの。 そろそろかな。 もう少しで、約束の時間。 大抵幹也は時間より少し早く来る。 ならば、ソロソロ姿を見せてもいい頃。 なんて思っていたら。
お待ちかねだったわよ、幹也。 愛しの妹が折角の休みを君に捧げるのだから。 感謝して下さいね。 人込みの中。 私の気が付いたのか。
そんなに走ったらダメだって。 仕方ないなあ。
待ったかい。 さて。 強引に幹也の腕を取って、絡ませる。 誰にも渡すものですか。 ちょっと気になったので、 ああ。 あちらのカップルも無事逢えたんだ。 その女性も。 私と同じ様に腕を組んで私とは反対方向に歩いていく。 あちらの女性も。 チラリと。 私の方を見た。 そして、又。
女性も、満面の笑みで返してくれた。 私もあんな笑顔していたのかな。
FIN 後書き。 魔術師の宴、第二段で御座います。 読んでお分かりかと思いますが。 だって他に出て来てないし。 他には某丘の上のお嬢様こと。 そこの所お間違えの無い様に。 ああ。 もう書いてて、「自分考え古いなあ。今時カップル言わんやろ」 年がバレる。
では。 |