天抜き・魔術風味

 作:しにを


 *以下のは、ええと、「絵の無い4コマ漫画」とでも思って下さい。
  脳内で絵を構築して読むのがコツです、というか出来ないと辛い。
  ……そういう仕様ですのであしからず(苦笑

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『1.炎の魔女』

 鮮花「どうしても私の手に入らないのなら……。
    ふふふ、完全密室状態で原因不明の謎の劫火に包まれ、まるで心中
    したかのように二人で消し炭になる兄妹というのも、確かに非凡では
    あるわよね……」
    手から、ぼわっと炎を出しつつ独り言。

『2.ジュリエットの卵』

 橙子「芸術家が対象を見つめている時は、集中か放心なのだが、両者には
    共通点があるな。外界認知がまったくゼロになるという……」
 幹也「サボっている処を見つかった時くらい、せめて悪びれて下さい。
    それとも、何か気の利いた言い訳のつもりなんですか?」

『3.錬金術』

 幹也「何かお金を作り出す魔法なんてのは無いんですかね」(溜息)
 橙子「そんな探求は潰えて久しい……、いや無い訳でもないのだがな。
    例えば石ころを宝石に変えたり、とかの類いの魔術はある」
 幹也「え? あ、でも実行するのは禁じられていたりするんですね」
 橙子「いや、別に。やりたければ自由だ。
    ただ、百万円の宝石を作るのに、一千万円掛かったりする訳だ。
    ……うむ、試してみるか、費用は借金してでも作ればいいし」
 幹也「……!」(千切れんばかりに首を横に)

『4.賞賛の言葉』

 アルバ「どうかね、これが私の最近の成果だ」
 橙子 「素晴らしいわ。非凡な発想力から出た斬新な理論、そしてそれを
     具現化するバックボーンの知力と魔力。
     こんな凄い研究を成功させるなんて、あなた以外には不可能だわ」
 アルバ「……(馬鹿にされている気がするのは何故だ?)」

『5.フジヤマ、ゲイシャ……』

 橙子「荒耶、私達二人のせいでこの学院に集う人間の日本人観をだいぶ歪
    めてしまったと思うのだけど……」
 荒耶「ふむ」(無感動だが、同意)


  
『6.白鳥は哀しからずや』

 橙子「異常者の群れにあって、普通を保つ奴というのはいちばん異常だと
    か言う論法があるな」
 幹也「そうかもしれませんね」
 橙子「ふむ(自覚はまったく無さそうだな)」

『7.敵が確認出来るのは、敵が存在しない事の次に良い』

 式 「オレにつっかかるのは別に構わないけどさ、オレがいなくなったと
    して、幹也は鮮花の方を向くのか?」
 鮮花「……」

 橙子「どうしたんだ、我が弟子は?」
 式 「いや、まさか泣き出すとは思わなかった」(僅かに動揺の色)

『8.家の一つや二つ買えそうな』

 幹也「そ、それ、本物ですか」
 橙子「ほう、黒桐でも驚くか。
    ああ、本物のダイヤモンドだ。報酬として貰ったんだ」
 幹也「それがあれば……」
 橙子「うむ、前からしたかった実験が出来るな」
 幹也「えっ?」
 橙子「これをだな、見ろ、この硬度をものともせず、穿ち、刻み、割る。
    そして、その存在すら霧散させるこの……、黒桐?」
 幹也「……」(卒倒)

『9.お小遣いならもっと多いと思います』

 幹也「妙齢の女性の傍にいて、身の回りの世話とかお使い仕事とかをこな
    して、時々気が向くとお金を貰える」
 橙子「なんだそれは?」
 幹也「きちんとした給料を介在しないと、ツバメみたいだなって」
 式 「……」(少し嫌そうな顔)
 鮮花「……」(凄く嫌そうな顔
 橙子「……」(それも悪くないかと言わんばかりの顔)

『10.譲れない一線』

 橙子「そう言えば、前に黒桐に真顔で訊ねていた事があったな。
    ここでの仕事で生活できないなら、両義家にでも仕えるかって」
 式 「ああ」
 橙子「で、黒桐の返事は?」
 式 「断られた。それだけはダメなんだそうだ。
    それが支障になったらどうとか呟いていたけど」
 橙子「ほう(意味はわかってなさそうだな)」

『11.二人で星を見たあの頃』

 鮮花「どうしました、兄さん?」
 幹也「うん。小さい頃、鮮花が遊びに行ったまま帰って来なくて何度も
    迎えに行っただろ。もう忘れちゃったかもしれないけど」
 鮮花「覚えています」(声の震えを抑えるように)
 幹也「その頃は少しは兄さんらしい事をしてやれたのになあって思った
    んだ。
    今は成績優秀で周りからの信望もあるし、僕から見ても感心する
    ほどしっかりしているしね。魔術の才能もあるそうだし。
    何もしてやれなくて少し寂しいなって思って……、変かな」
 鮮花「……いえ。(それでいい、それでいいのよ。でも何だか凄く寂し
    い気持ちになるのは何故なんだろう)」

『12.問題無し』

 橙子「もしも、黒桐と血の繋がりがなかったと判明したらどうする?」
 鮮花「どういう意味ですか?」
 橙子「結ばれようが、婚姻しようが世間を憚る事が無かったら、それでも
    固執するのかな?」(悪魔の如き笑みで)

『13.遠きに在りて』

 青子「姉さん元気かしら?」(腐ったトマトを見下ろしつつ)

『14.OUT RUN』
 
 幹也「橙子さんは、自動車免許持っているんでしたよね」
 橙子「ああ。……うん、たまにはドライブも悪くないな。
    もちろん、付き合うよな、黒桐は?」
 幹也「……は、はい」(気圧されて)
 橙子「ふふ、心配するな。ちゃんと修理はするから」
 幹也「(車をですが、僕をですか?)」

『15.不可能の領域』

 橙子「魔術などと言うのは、確かに信じがたい事を可能にする。
    ただし、決して万能な訳ではない。他愛の無いおとぎ話の中ですら
    大抵は何らかの制限付きだったりする位だ」
 幹也「はい」
 橙子「出来る事、出来ない事、それを冷徹に見極める、まあ魔術師に限っ
    た話ではないがね」
 幹也「で、給料がきちんと払われないのはどっちなんです?」
 橙子「聞きたいのかね?」(意外そうに)

『16.生きる為の戦い』

 橙子「なあ、黒桐」
 幹也「なんです? まさか先着30名インスタントラーメン1箱100円
    特売に出掛ける邪魔をするつもりじゃないですよね」
 橙子「……いや、その」(気圧されている)
 幹也「別に遅れている給料を一部でも頂けるなら、こんな困窮生活からは
    半歩は足抜け出来るんですけど?」
 橙子「ええと……、じゃあこっちの缶詰在庫大放出セールは私が受け持つ
    としようか」

『17.関門』

 アルバ「これは、なんと嫌ったらしい封印だろう」
 橙子 「確かに。正攻法で結界の素子を潰していくのも面倒だな」
 アルバ「いかな私の炎と言えど、これを焼き尽くすのは時間が掛かる」
 荒耶 「何をぼやぼやしているのだ? 
     破ァッ!!」
  異様な響きと共に、瘴気が消え、鉄塊の如き扉がへし折れる。
 荒耶 「行くぞ」
 アルバ「……魔術と呼びたくないな、これは」
 橙子 「ああ。結界ごとぶん殴っただけだものね」

『18.嗜好』

 鮮花「結局、幹也って“変なもの”に弱いんだわ」
 式 「……」(思い当たる節あり)
 橙子「……」(同じく)

『19.式が男でも女でも』

 橙子「……」
 式 「さっきから何だ、橙子?」
 橙子「ああ、たいした事じゃない。
    中身が荒耶の式というのも見てみたかったな、と思ってな」
 


『20.花園』

 橙子「女に囲まれた職場でいいなあ、黒桐?」
 幹也「え? …………そう言えば」

『21.禁忌』

 橙子「なんだ、まだ腹を立てているのか、黒桐が式の中身が男でも女でも
    構わないみたいな事言ったから」
 鮮花「違います」
 橙子「……ふうん?」(面白そうに)
 鮮花「何ですか、橙子さん」
 橙子「いや、ね。そちらの方が鮮花には都合がよいかな、と思っただけ」
 鮮花「都合が良い?」
 橙子「黒桐が好きになったなら、性別とかそんな些細な事など気にしない  
 
    と言うのなら……」
 鮮花「些細では無いでし……」(何かに気付いて真っ赤になる)

『22.気をつけなさい。あやうく蹴り飛ばされるところだったんだから』

 鮮花「蒼崎青子、魔法使い……」
 橙子「ああ、破壊しか知らない悪鬼羅刹のような女だ。
    出会っても絶対に目を合わすな」
 鮮花「まるで野生動物でも相手にするみたいですね」
 橙子「そちらの方がマシさ。腹が減っていなければそう危険は無い。
    奴はなまじ人の姿をしているだけに、あれは始末が悪い。
    どんな事があろうと他人に心を許さない、道端で苦しんでいる子供
    がいても、邪魔とばかりに平然と踏み躙って気にしない女だからな」
 鮮花「そうですか」(ちょっと疑わしそうな顔で)
   


『23.不倶戴天』

 幹也「そんなに妹さんと仲悪いんですか?」
 橙子「ああ」(五月の青空の如く晴々とした笑顔で)
 幹也「……」
 橙子「他人にはわからんさ。
    ……でも、死ぬ間際には顔を見たいとは思っている」
 幹也「そんなものですか」
 橙子「そうだよ。……言っておくが向こうが死ぬのを眺めるんだぞ」

『24.いないから欲しがるのだよ』

 橙子「一言で言えば無用の長物。例外なく愚鈍で狡猾な世界に害しかもた
    らさない。どう弁護しようと屑としか言いようがない存在だよ、妹
    なんて存在は。
    そう思うだろう、黒桐も?」
 幹也「自分の死刑執行届にサインをしろと?」
 妹1「……」(何とも言いがたい目)
 妹2「……」(不自然な笑みで兄と師を見つめている)

『25.人に優しく』

 幹也「ねえ、式、橙子さんて病気になったりして弱っている時って、別人
    みたいに優しい口調になるじゃない」
 式 「そうだな」
 幹也「風邪とかでああなるのなら、もっと凄い瀕死状態になったらどうな
    るんだろうね」
 式 「……」(妙に興味をひかれた様な表情)
 幹也「式、試さなくていいから」(やや慌てて)

『26.人に優しく2』

 式 「ひとつ言えるのは」
 幹也「うん?」
 式 「死ぬ寸前には“良い人”になるんじゃないかな、不本意にも」
 幹也「不本意だろうね、確かに」

『27.パターン』

 式 「オレの場合、理由はわからないけど付きまとわれて、嫌だって言っ
    たのに聞いてくれなくて、今に到るな」
 橙子「私も、目くらましも物とせずに自宅に押しかけて来られたな」
 藤乃「弱っている処を、強引に部屋に連れ込まれました」
 式 「なんだか凄いな、幹也って」
 
 鮮花「…………なによ、みんなして嬉しそうに自慢話して」

『28.誰でも一度は与えられる』

 橙子「思うんだが、敵も無く確実に心を捉えていた機会を逃した時点で、
    もう負けは確定したんじゃないのか?」
 鮮花「だってまだ子供で……」
 橙子「精神的には幹也を上回るほど大人だったのだろう?」
 鮮花「……」(滂沱の涙)

『29.自覚なし』

 式 「幹也って悪人だよな」
 幹也「そうかな」(不本意そうに)
 式 「そうだ」(断定)
 幹也「うーん? でも式が言うのならそうなりかもしれないね」(笑顔)
 式 「……そういうところが悪人なんだ」(顔をぷいと横に逸らして)
 幹也「?」

『30.建設的な』
 
 式 「別にオレに敵意を持つのは自由だけど、もう少し実りある方向で考
    うたらどうなんだ?」
 鮮花「どうしろって言うのよ」
 式 「そうだな、世界中を焼き尽くして幹也と二人きりになるとか、幹也
    に鮮花を傷つけさせて縛り上げるとか、逆に幹也をぼろぼろにして
    世話をするとか、いろいろ方法はあるだろう」
 鮮花「……」
 式 「いくら何でも悪趣味な冗……」
 鮮花「式、あなたがそんな女の子らしいロマンティックな夢想をするなん
    て思わなかったわ。そうね、そういうのもいいわね」(うっとりと)
 式 「……」(後退り)


ボーナストラック? 『メイドさんは魔女』篇

 *解説:『メイドさんは魔女』とは、武内崇さんの同人誌での漫画です。
  蒼の魔女と呼ばれた古の魔道師のひとりローゼリオ・レインは、世界の
 絶対的法則に 手を加えようとした為、神々の怒りに触れ、ぬぼーんとし
 ただんな様に仕える罰を受けている。
  ロゼは絶対服従装メイド服によって魔力を封じられ、その機能によって
 メイドらしい属性をつけられ(は主人に思慕の情を持つとか、ドジとか)
 て……、そんな感じのお話。


『1.でも断る奴はいないと思います』

 ロゼ 「しかし、押しかけメイドです、ただ働きでいいので置いて下さい、
     とか言って現れた正体不明のメイドを、ろくに詮索しないで二つ返
     事で承諾するんだから……。
     大人物と言うか、お人よしの間抜けと言うか。
     でも、優しいから置いてくれたんであって、間抜けはちよっと言
     い過ぎよね、……ってなんで自分に弁護しているのよ」
 だんな「あ、ロゼ、探したよ」
 ロゼ 「ひゃ、ひゃい、ご主人様、あああッ!」(洗濯籠を蹴飛ばす)

『2.夜のお仕事』

 ロゼ 「もし、夜伽とか命じられたら、こいつ(絶対服従メイド服)の力
     で、嫌でも逆らえず無理やり従わされるのかな……。
     まさか、そんな事はしないだろうけど。
     でも、でも、もしも……」(顔を真っ赤にして葛藤)

『3.続・夜のお仕事』

 ロゼ 「でも夜伽も仕事だとすると、ドジ機能が働いてとんでもない失敗
     しちゃうのかな?
     そしたら、ええと……」(いろいろ想像して真っ青)

『4.夜のお仕事・解決』

 ロゼ 「仕事でなければ、いいのよね」(達観しつつ、少しだけ赤面)

『5.ポジティブなネガティブ』

 ロゼ 「失敗を前提にして、到達点を二倍くらいにしておけば、相殺され
     て調度良くなるかも」

『6.本人が良ければそれで』

 ロゼ 「だんな様は、私の仕事に満足されていませんよね?」
 だんな「え、なんで? 不満なんてないけど」
 ロゼ 「本当ですか」
 だんな「うん。なんで、そんな事言うの?」(心から不思議そうに)
 ロゼ 「だって……、な、なんでもありません」

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 あとがき

 と言う事で幾つかまとめてみました。
 やっぱり日常ものなので、幹也達四人が思いつきやすいですね。
 書いている方もだんだんと面白いのか、ズレているのかわからなくなって
きておりますが、適当に楽しんで頂ければ嬉しいです。

 どうも『メイドさん』がイエローカードで退出っぽいですが(笑

  by しにを(2002/10/20)
  

   

 


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