ドラマCD「空の境界 俯瞰風景」を聞いて何かが足りない、とお思いのあなたへ。
ばっちり補完しました。ではご覧下さい。

俯瞰風景補完計画

「トウコ、義手ぐらい作れるだろ。人形師を自称してんだから」
「よかろう、今回の報酬はそれだな。ついでに・・・」

track15 橙子と霧絵

ガチャリとドアが開く音がした。
「失礼。巫条霧絵というのは君か」
その来客は女性だった。そして恐らくは、
「あなたは私の敵ね」
その問いかけにああ、と女性は頷いた。
例え敵であっても、私に止めを刺しに来た死神であったとしても、私に面会に来てくれた、数年ぶりの客なのだ。
追い返せようはずも無い。
その人とはいろいろな話をした。私は久しく無かった程しゃべり、話した。
何年もほとんど使われなかった私の声帯は、急な酷使に耐えかねて時々咳き込んだりもしたけれど、それでもなお私は話し続けた。
だってこれは私の最後のおしゃべりになるのだから。
私は生きながらにしてすでに幽霊の様なものだ。
生まれてからこれまで、ほとんどの時間をただ無意味に病院のベットの上で過ごしてきた私は、
やはり何も成しえないまま無意味に死のうとしている。

私は何も成せず、何も残せない。
医者も看護婦も私のことなどすぐに忘れてしまうだろう。
漠然とではあるが、せめて敵としてでも、敵だった『もう一人の私』の影としてでもいいから、と思ったのかもしれない。
彼女が何かを確認しに来ただけなのは解っていたが、もう少しだけ、ほんのしばらくの間だけ付き合ってもらう事にした。


いろいろなやり取りをした後、彼女は
「邪魔をした。これが最後になるが・・・」
と最後の質問をした後、私のベッドから離れ、ドアに手をかけた。
そこで見送る(ほとんど見えないのだが)私の方をふと振り向き、もう一度こちらへ戻ってきた。
「そういえば、式と君はどんな戦いをしたんだ。教えてくれないか」
式は詳しく教えてくれなくてね、と彼女は言った。
私は式という子と『もう一人の私』との戦いを思い返す。


あれは戦いと呼べるほど対等では無かった。
『私』の暗示の域を超えたはずの洗脳は彼女には全く通用しなかった。
『私』の空への誘惑に彼女は「冗談」と言ったのだ。
彼女は言う。
「そんな憧れは私の中にはないんだ。生きている実感がないから、生の苦しみなんて知らない。
ああ、本当はお前の事だってどうだっていいんだ」
唄うように呟く。
「でもあいつを連れて行かれたままは困る。拠り所にしたのはこっちが先だから。返してもらうぞ。」
そう言って彼女は疾走を開始する。
『私』は更に力を込めて意思を彼女に叩きつけた。


「落ちろ、落ちろ、落ちろ、落ちろ・・・」


私の意志をものともせず、彼女は空中にある『私』を睨みつける。
少なくとも『私』は彼女の手の届かない所にいる。
その事は『私』を少し安心させた。
もとより何も触れない代わりに何にも傷つけられない身体ではあったが、『私』の本能は彼女だけはいけない、
と警鐘を鳴らし続けている。普段から死におびえ続けていた私だというのに。

彼女が自分の着物に手をかける。
何をするのかと思っていると、彼女はおもむろに自らの胸元を大きくはだけた。
彼女は下着を付けていなかったのでその絹の様な白い肌が、手の平に余る程の形の良い乳房が夜の外気に、月の光に晒される。
未だ若干の未成熟な硬さを残す彼女の肢体は、蒼い月の光の下でどこか硬質の陶器人形を思わせた。
それでいてその胸のふくらみは他と同じく陶器のような光沢を持ちながらも、どこか柔らかさを感じさせる。
そのコントラストを『私』は


― 正直、美しい、と思った。


だが、それと同時に『私』の中の警鐘が一際大きくなる。
行動は不可解だが、アレは『私』を破滅へと追いやる行為だ。そう直感した。


「・・・落ちろ、落ちろ、落ちろ、落ちろぉぉぉっ」
「お前が墜ちろ」


彼女の胸が柔らかく揺れた。そう思った瞬間。
ソレが私に向かって発射された。


おっぱいが


それは見る間に『私』に到達し、『私』のほっぺに、
ムニッ
あ、本当に柔らかい・・・。すべすべで肌触りも最高。人肌のぬくもりが・・・


ボムッ!


爆発した。


フヨフヨフヨ・・・・・・ポテ


ゼロ距離での爆発の衝撃と爆風に煽られて、『私』は巫条ビルの屋上に落っこちた。
それにしても、ゼロ距離爆発よりもなぜかあの飛んできた乳の感触の方が衝撃的だった。
あの感触と言ったら。
アレに顔を埋めてほお擦りしたいと考える『私』はあぶのーまるなんだろーか。
後から考えればそんな馬鹿な事を考えているべきではなかった。


ザッ


「え?」
『私』の胸にナイフが突き刺さる。果物をナイフで刺すように呆気なく、刺された『私』が恍惚するほどの鋭さで。


「なるほど」
私の話を聞き終わった彼女はニヤリと笑った。
「私のつけたおっぱいミサイルが役に立ったという訳だ」
「あなたが・・・」
私はあきれてものが言えない。だって、
「・・・なんて悪趣味」
彼女はちょっとムッとしたようだった。
だが悪趣味には違い無い。自分でももう永く無い事を自覚している私に奇妙な執着を植え付けてしまったのだから。
かろうじて見える輪郭からでもそこそこ以上の容量が有ることは判る。
責任を取って今すぐ脱げと言いたい。。
今すぐ脱いでその乳揉ませろ、ほお擦りさせろ、ねぶらせろ、と言いたい。
どうせ死ぬんだあぶのーまる上等、と言いたい。
彼女は多分私の言葉の意味を取り違えたまま、反論した。
「だって式の奴、義手にしたクセにロケットパンチにしようとしたら怒るんだぞ。左手が無い状態じゃ身体バランスが崩れるからって。そのクセ飛び道具は欲しいって言うし」
何故かいきなり子供じみた言い様になって、延々と説明し出す。ムッとしていた筈なのに、説明するその顔は妙に輝いていた。
「・・・と言う条件から光子力ビームかおっぱいミサイルが最適と思われたんだ。
 どちらかといえば光子力ビームの方が利便性、威力の点で優れていたのだが、ヤツの裏を掻く必要があったし、
 また様々なタイプを作ることが可能と言う点で・・・」
「はあ」
得々と解説する彼女。
私はもはやただ相槌を打ちつつ聞き流し、彼女の胸をじーっと物欲しそうに見つめるのみだった。

track16 幹也と式・・・帰り道・・・の後

「ストロベリー」
「は?」
「ストロベリーアイスクリーム二つ。お前がこの間買ってきてそのままだ。始末してけ」
「・・・そういえばそんな事もあったっけ」


そんな訳で、僕は式の部屋でストロベリーアイスクリームのカップにスプーンを差し込んでいる。
もう9月が近いとは言え、まだまだアイスクリームのおいしい季節であることには違いない。
その上、暑さ寒さに強い式の部屋には冷暖房なんて気の効いた物はないので、ますますアイスが美味くなるという訳だ。

であるのに僕の向かい、自分のベッドに座り込んだ式はまるで真冬にアイスを食べるかのように、
ほんの少しスプーンの先にアイスを乗っけては舐めるように少しずつ少しずつストロベリーアイスクリームを減らしている。
これでも譲歩した方で、最初は本当に二つとも僕に始末させる気だった。
結局一人で食べても美味しくない、二人で食べようと押し切ったのだ。

「まったく。暑さ寒さには強いのに冷たいものは苦手なんて、変な体質だね式」
「うっさい」
式はフンと鼻を鳴らすと、またちまちまとアイスをつつき始めた。
それを和やかな気分で見つめている。
それは嘘じゃない。
だが何か引っかかる。
橙子さんの事務所に居たときから、あるいは今日事務所で起きたときからだろうか。
何か違和感が付きまとっている。それが何か解らない。なんだろう?
早くも食べ終わったアイスのカップをゴミ箱に放り込み、頭を捻る。
不意に思いついた。記憶?記憶なのか?自らの記憶と現在に何か矛盾が有る様な気がする。
自分の記憶をたどって見る。
二年前、二ヶ月前、一ヶ月前、そして・・・昨日の記憶。
ああ、どうして今まで気付かなかったのか。僕の記憶と現在には明らかに大きな矛盾が有る。
だが、それを聞いて良いのだろうか?
聞いてはいけないことなのではないのだろうか?
それを聞く事によって何かが壊れてしまうのではないだろうか?
そんな思いが頭の中をぐるぐると駆け巡る。
しばしの逡巡の末、僕は訊ねることに決めた。いや、訊ねずにはいられなかった。
「式ちょっといいかい」
「ん、なんだ幹也」
未だ半分近く残るストロベリーアイスをつつきながら答える式。
そろそろ周辺部は溶け出している。
「訊ねたい事があるんだけど」
「なんだ。早く言えよ」
「その・・・」
つばをゴクリと飲み込む。そして真実を聞く覚悟を決めた。


「なんで洗濯板みたいになってるのさ、式の胸」


そう、僕の記憶の中の式の胸は僕の手の平にちょっと余るほど有った筈なのに!
乳がいきなり無くなる筈も無い。・・・まさか、今までの方がニセ乳だったのか!?
一瞬パニックに陥りそうになるのを必死で押し留める。
落ち着け、式が昏睡状態の間に何度もあのすべすべぷにぷにを確かめたじゃないか!
あの時の式のおっぱいは本物だったと断言できる。・・・確かめた事がばれたら僕は死ぬが。
しかしそうするとやはり不可解である。
僕は式の返事を待った。
「ああ、そういや付け忘れてた」
僕の緊張など感じてもいないかの様に式は言った。
そして部屋の隅からなにやら金属製の頑丈なケースを引っ張り出した。
表面に危険と書かれたステッカーがデカデカと張ってあるのが不安を呼ぶ。
「・・・なんだい、コレ」
「なにってミサイル。飛び道具って有利だし」
そう言って開けられたケースの中には小型ミサイルとおぼしき物がいくつも入っていた。
ただし、皆一様に先端が女性の乳房を模した物である事が非常に異様だった。
「これがマニュアルだそうだ」
ひったくる様にして分捕る。その表紙には案の定
『おっぱいミサイルマニュアル   by蒼崎 橙子』
と書かれていた。・・・・・・あのアマ。
表紙をめくる。
『おっぱいミサイル。それはまさに万能の兵器である。
情況に応じてミサイルの詰め替えが出来るだけでなく、何と胸の外観も自由に変えられる。
これで青子の奴にあら姉さんってバストが私より3cmも小さいのね、なんて言わせやしないのだ!
今はまだ標準、巨乳、貧乳のスリータイプだが、将来的には変幻自在のおっぱいが大空を翔ることに・・・』


バタン


始め数行で眩暈を起こし、マニュアルを閉じた。
両目の間を軽く揉み解す。
「どうした、幹也」
声を掛けてくる式の両肩をがっしりと掴んだ。
「・・・幹也?」
困惑の声をあげる式になるべく抑えた声で告げる。
「式、おっ・・・その、ミサイルを取り外すんだ。元に戻してもらえ」
「え?だって便利だぜ、コレ。外してると肩も凝らなくなったし」
・・・式にとっては単なる肩こりの元なのかもしれない。だが僕に、僕にとっては!
僕は更に式の両肩に置いた腕に力を入れ、訴える。
「頼むよぉ、元に戻してくれよぉ、頼むからあさぁ!」
「み、幹也、そんな血涙を・・・分かった、分かったから手を離してくれ」
説得がみのり、式は承諾してくれた。良かった、本当に良かった。
ほっとする僕に掴まれた肩をぐるぐる回しながら式が言った。
「しかし、なんでそんなに拘るんだお前は」
「決まってるじゃないか」
僕が当然とばかりに答えると、式は首を傾げた。
「幹也、さっきからおかしくないか?妙に興奮しているようだが」
それにはかまわず、僕は式のおっぱいがいかに人類の財産であり、至宝であり、
我が両儀式のおっぱい力は世界一ぃぃぃぃっであるかを延々と演説した。
途中なぜか式は無言でおっぱいミサイル(巨乳タイプ)を発射したが僕はへこたれなかった。
その程度で僕の式の乳への思いは揺るぎもしない。
諸君、私は乳が好きだ!
諸君、私は乳が好きだ!
諸君、私は乳が好きだ!


結局ミサイル発射のせいで消防車が到着し、更に僕の演説を聞いた消防士によって救急車が到着するまで演説は続いた。

track17 エピローグ & アフター

・・・ほどなくして人が落ちてきた。
あまり聞く機会のないぐしゃりという音。
その女は僅かに指先をさ迷わせると動かなくなった。
ビルから墜ちて死んだのは明白だった。
アスファルトには朱色が流れていく。
それが誰であるか、自分は知っていた。
そう、空を飛びたいと、何処までも飛びたいと願った少女を。
・・・いや、二十代の女性を少女とは呼べないな、と私は思い直した。
集まってくる人だかりを無視して歩き出すと、ぱたぱたと不思議な足音を立てて鮮花が追いついてきた。
「橙子さん、今の飛び降り自殺でしたね」
いろいろと話しかけてくるのに曖昧な返事を返す。
彼女の最後の意志は飛行でも浮遊でもなく、墜落という単語で纏められてしまう。そこにあるのは虚しさだけだ。
興味のもてる筈もない。
だが、ふとやはり彼女は飛びたかったのだろうな、と思う。それが望むべくもないから浮遊し、それも出来なくなって墜ちた。
「自殺に理由はない。単に今日は飛べなかっただけだろう」
そう、彼女は飛べなかった。
何となく巫条霧絵の事を鮮花に話す気になった。


「で、なんですかコレ」
作業する私に鮮花が問いかけた。
「見て分からんか?」
「見て分からないから聞いてるんです」
私はそれもそうだと呟いて、説明を入れた。
「これはな、空を自由に飛ぶための便利な道具だ」
是非とも飛ばしてやりたい女がいたんだが、と言うと鮮花はああ、と呟いた。
「例の巫条という人ですね。でもこれタケコプターにもヘリトンボにも見えませんが?」
鮮花もなかなか失礼なことを言う。
「私がそんな空想科学読本にも載るような非科学的な物造る訳ないだろう。もっと確実性のあるものだ」
「・・・箒で空飛ぶ魔術師でしょうに・・・非科学・・・」
鮮花が何やら言っているが、私には何も聞こえないなあ。
しばらく耳に蓋をしていると、鮮花は再び聞いてきた。
「で、何なんですか、コレは」
「これはな・・・」
ちょっともったいをつけて見る。
「紅の翼『ジェットスクランダー』だ!」
・・・鮮花は驚いてくれなかった。きょとんとしている。
何となく物悲しい気分になっていると、やがて鮮花が口を開いた。
「じぇっとすくらんだーってなんですか?」
「知らないのか。強力な光子力エンジンのジェット部分と超合金Z製の翼、そして取り付け用ベルトからなる『紅の翼』だ。
翼は超合金Z製だからスクランダーカッターとしても使えるという品物だ」
納得いかないが一応説明する。
「・・・本当に知らないのかなあ、ジェットスクランダー。私が子供のころは流行ってたんだけどなあ、これ」
主に男の子の間で、だった事は置いておく。
「これで巫条さんを飛ばすつもりだったんですか・・・」
「そう、巫条霧絵は大空へ飛んで行く予定だった」
鮮花は妙にあきれた様な、何とも言えない顔をしていたが、やがてポツリと言った。
「話で聞く限りでは、巫条さんて身体はボロボロだったんですよね」
「ああ」
「ジェットなんかですっ飛ばしたら、飛ぶ前にショック死しませんか?」


・・・あ。


「と、ともかく巫条霧絵は死んだ。よってこれを完成させる意味は本来無いのだが、中途にしとくのもいやだから完成させようと思う。まあ式なら使えるだろ」
「ごまかしましたね橙子さん・・・」
なぜか白い目で見られつつ私は作業を再開した。


「そういえば橙子さん。今日飛び降りた人ですけど」
「ん、どうかしたか」
私は製作中のブツから目を離さずに応じる。
「なんか地面に落ちた時に指動かしてたじゃないですか。あれダイイングメッセージってヤツじゃないですかね」
何かと思えばそんな事か。そういえば巫条霧絵のことは話したが、アレが当人だとは言わなかったな。・・・別に言う必要ないか。
「鮮花には何か読めたのか」
「いえ、私にはさっぱり。橙子さんからは指の動き読めませんでしたか」
「いや」
否定する。
本当は読めたが意味が分からなかった。


『ちち』


何が言いたかったんだ巫条霧絵。


track18 エンディング・・・の間

事務所には、私と鮮花だけがいた。
式は部屋から火事を出したとかでこのところ後始末に追われている。
黒桐はちょっとした事情で今日はずっと寝ている。
鮮花が魔術書を書き写す音だけがカリカリと事務所に響いている。
と、突然奥の部屋から
「うあああああっ」
という叫び声がした。
「兄さん!?」
鮮花が腰を浮かせる。
私には事態は把握出来ていたので、落ち着くように言った。
「黒桐が起きただけだ。すぐ元気良く出てくるさ」
そう言っている間にも乱暴な足音と共にすごい勢いで扉が開かれた。
そして黒桐がそのままの勢いで詰め寄ってくる。
「と、と、とととととうこさんっ」
「何だ黒桐ラップか?」
なかなか上手いと思っていると、黒桐はそんなんじゃないと珍しく乱暴に言った。
かなり興奮気味だ。
「じゃあ、何だ」
「コレですよ。コレは何ですかぁ!」
黒桐は自分の胸元を指す。そこには、
「に、兄さんに胸が!?」
そう、鮮花の言うとおり、胸に丸みを帯びた膨らみがあった。
服の上からでも自己主張するそれはトップとアンダーを計ればDカップはいくのではなかろうか。
「立派な胸だと思うが」
至極冷静にそういうと、
「立派かどうかはいいんです。何でこんなことしたんですか!」
全然冷静でない答えが返ってきた。
「式からおっぱいミサイルを外せと言ったのは君だろう」
「だからって何で僕につけるんです!」
やれやれと思いつつ噛み砕いて説明してやる。
「いいか、黒桐。私もうっかりしていたのだが、おっぱいミサイルはヒロインメカに付けるのが王道なのだ。
式は女だが明らかにヒーローだからな。改めてヒロインに付け直したと言うわけだ」
我ながら理路整然とした説明だったと思う。だというのに黒桐は納得しなかった。なんと言うことだ。
「そ、そんなことの為にこんなことしたんですかぁ!」
黒桐は自分の服のボタンをすべて引きちぎった。
その白く、大きくて形良い乳房が白日の下に露わになる。
「に、兄さんにそんな胸をつけるなんて・・・」
鮮花の目は黒桐の胸に釘付けになっている。そんなにショッキングだったろうか。われながら芸術的な出来だと思ったのだが。
「鮮花ぁ・・・」
黒桐はなにやらすがるような目を向けている。
「なんて・・・・・・すてき(ぽっ)」
「う、うわああああっ」


おっぱいミサイルが発射された。


ムニッ
おお、予想以上の柔らかさ、もち肌で・・・
向こうでも鮮花が「これが兄さんの・・・柔らかく、それでいて弾力があって・・・」などといっている。
何故か唐突に閃いた。


― ああ、そうだったのか巫条霧絵。


そして


ボムッ


その日、伽藍の洞から爆発音と黒煙が上がり、消防車が到着した。
私は新しい身体に取り替えて事実上無傷。
鮮花も直撃した割りに全治三日ほどである。鮮花もなかなかしぶとくなったな。
消防士によって二つの爆発現場に共に居たことが証言された黒桐は警察に任意同行されて行った。合掌。


・・・と思ったら秋巳刑事のツテであっさり一晩で戻ってきた。奴もなかなかにしぶとい。

track19 ボーナストラック

コツコツコツ ギィー、バタン


いずことも知れぬ部屋にその主が帰還した。
がっしりとした肉体と永遠に険しい表情を刻んだ顔が特徴的なその男は誰もいない部屋の中、一人呟いた。
「よくやった巫条。しょせん捨て駒ではあったが上出来だ」
部屋の中に進み、机の上に広げられたいくつかの紙片を手に取る。
「しかし」
紙片に目を通す。
「てっきり『光子力ビーム』だと思ったのだが」
かつて蒼崎橙子に『元祖スーパーロボット』について熱く語られた男はグシャリと紙片を握りつぶす。
「裏を掻かれたか」
かつて蒼崎橙子に『光の巨人』について熱く語った男は『ビームもばっちり、
荒耶宗漣スペルゲン反射鏡装着計画』を無念そうに投げ捨てたのであった。

あとがき

補完されたのは『おっぱいミサイル』ですがなにか?


・・・えー、長らくケッタイなものをお読み頂きありがとうございます。
実はこれは乳祭りで巫条霧絵SSが書けないものかと頭を捻っている時に出た話です。
だから本来は現在で言うtrack15 track17の一部のみだったんですが、
当時「だめだ、式の出番が少なすぎる」と没にしたのと同様「だめだ、橙子さん(魔術師)が主役じゃない」と加筆しました。
改めて見ると、丸々蛇足ですなー。やはり『ちち』と書き残して終わるべきだったか。でもアイス式も書きたかったしなあ。


勘の良い方はもうお気づきかと思いますが、今回も落書きを乗っけてます。
今回は式乳祭りで支援のなかった少数意見にスポットを当ててみました。いいオチが浮かばなかったんで。
モデルは魔術師の宴らしく女性魔術師+その他の皆さんです。いや女性魔術師が二人しかいないから。
ではどうぞ。

 

 

テキスト ボックス: 焼肉『大帝都』がまずかったか・・・
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テキスト ボックス: 幹也が協力してくれるんじゃ
なかったのぉ(涙
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テキスト ボックス: ・・・馬鹿、あんまり見るな 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テキスト ボックス: んっふふふふふふ
そりゃ、死んじゃったからねえ
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テキスト ボックス: 太極とか好きだからー