荒耶の野望

 荒耶には、式の身体を手に入れる秘策があった。
「本当に、抑止力に邪魔されない方法があるのか?」
 アルバに問われた荒耶は、計画を伝えた。
「人間を使うから、抑止力が働くのだ。入って来い」
 ギイィィィ。
 研究室の扉が開いて、入ってきたのは……。
「ンゴ」
「アアッ。ゴリラだ!!」
 次々とゴリラが研究室に入ってきたのだ。
「用意された駒は三つ」
「ンゴ」
「死に依存して浮遊するゴリラ」
「ンゴ」
「死に接触して快楽するゴリラ」
「ンゴ」
「死に逃避して自我するゴリラ」
「ンゴ」
 ゴリラ達を見て、感心するアルバ。
「成る程、ゴリラの仕業なら抑止力は働かないな。どうやって、こいつらを手懐けたんだ? やっぱりバナナか?」
「バナナに、パイナップルもつけた」
「そうか、南国産で攻めたか」
「これで、計画は成功したも同然だ」
「だがな、荒耶。おまえは一つだけ間違いをおかしているぞ?」
「―――――間違いなど、ない」
「ゴリラが、四頭いるぞ」
「ウソ!?」
 確かに、さっき荒耶の言葉に続いて吠えた声は、四つ有った。
「ンゴ」「ンゴ」「ンゴ」「ンゴ」
「どーすんだよ、四頭もいて」
 二人は、頭を抱えた。

 研究室でゴリラ達を見回しながら、荒耶は語った。
「四頭目の、能力が判った。形の無い言葉を操るゴリラだ」
「それは、万物に話し掛けられるということだな」
「勿論、我々にもだ」
 二人は、四頭目に注意を向けた。
「バナナ」
「おおっ! 確かに、あいつの言葉が聞こえる」
「そうだろう」
「ジャングル」
「成る程、あいつの能力はよく判った。だが、バナナとジャングルだけで、どうしろっていうんだ?」
 二人は、また頭を抱えた。

 四頭の中で、やたらバナナを食べまくるゴリラがいた。
「一体、なんなんだ? 荒耶」
「あいつの起源は、食べる事だからな」
「……なあ、ゴリラって草食動物だろ? 食べるからってどうするんだ? 第一、食べない動物っているのか?」
「俺も、あいつには戦力外通告を二年前にした。その次の日、何食わぬ顔でバナナを食ってやがったんだ」
 二人は、頭を抱えた。

終わり

【あとがき】
今日は、練馬です。
またやっちゃったよ。どうしよう。
あんまりクロマティばっかりもどうしたものかと思ったけど、今蔵出し出来たのはこれだけでした。
それと、ゴリラはあくまでもゴリラですので、藤乃でも白純でもありません。

それでは皆さん(いきなりダッシュして逃げ去る)。

オマケ
 僕は、アイスクリームを持って式の部屋に入った。
「ここに来る前に、ゴリラに会ったよ」
「そうか」
「今月に入って、八頭目だ」
「また、増えてるーっ!」
 僕達は、頭を抱えた。